2021.11.2オンライン開催!会社員、専業主婦を経て起業!私らしく調和のとれた生き方とは? 鷲谷恭子さん

 

今回のゲストは鷲谷恭子さんです。鷲谷さんは大学卒業後、総合職として8年間勤務した会社を第1子の出産・育児をきっかけに退職。専業主婦時代に経験した通訳ガイドや子育て支援、まちづくりなどのボランティア活動を通して感じた想いを胸に2019年5月、子育て中の女性が1日2時間から働けるような、ワークシェアリングによるビジネスモデルを構築、開業しました。その名も「2hours(トゥーアワーズ)」。さらに同年10月に税理士法人三部会計事務所とのジョイントベンチャーとして「株式会社ケイリーパートナーズ」を設立します。ブランクを経て再就業した女性が、自分が大切にすることを調和させながら活き活きと働ける会社で、主婦感覚を活かしたバックオフィス全般の支援を展開。オフィスにはキッズスペースもあり、お子さんと一緒に出社することも可能です。

 

鷲谷さんは、なぜこのような会社の設立に至ったのでしょうか。彼女の人生のターニングポイントと、ご自身が推奨する「調和のとれた生き方」とは何かについて語っていただきました。

 

男の子のように育てられた子ども時代、そして母のこと

 

3人兄弟の末っ子として福島県郡山市で生まれた鷲谷さんは、2人の兄たちと共に男の子のように育てられました。いつも真っ黒に日焼けして外で遊んでいるような子どもで、人形遊びをした経験はほとんどなかったそうです。躾に厳しかった父に対して、母は少女のような可愛らしい人でした。

 

鷲谷さんの母は身体があまり丈夫ではなかったため、家では疲れて寝ている姿が印象的だったそうです。家族でたった一人の女性でありながら、娘として十分に甘えることができなかったといいます。その母を鷲谷さんは高校卒業の時に癌で亡くします。大学受験のために東京に行く前日に「受験が終わって帰ってきたら退院していてね」と病室で、母とハイタッチして別れたのが最後でした。この母との早すぎる別れが、のちの人生に大きな影響を与えたと鷲谷さんは振り返ります。

 

入退院を繰り返していた母を見舞いながら猛勉強して合格した早稲田大学では、チアリーディングに打ち込みます。チアリーディングとはチームプレーの力で最高のパフォーマンスをすることで評価をもらえる競技であり、一見華やかそうに見えますが、あざが絶えないほど身体全体を使うハードなスポーツです。チアを通した体育会系の熱い仲間たちとの出会いにより鷲谷さんは「想いを合わせ、より良い物をみんなでつくりあげる」ことに、ものすごく大きな喜びを感じる自分に気がついたそうです。

 

出産を迎えたその時に芽生えた違和感

 

卒業後、就職したJR東日本は、男女機会均等法の本格施行の初年度でした。総合職として転勤を重ねた鷲谷さんは、夜遅くまで働き、勤務終了後は飲みに行く。日付を跨いでの帰宅もしばしば…という生活ぶり。仕事に恵まれていることに感謝はしていたけれど、出産、育児といった未来のライフイベントとキャリアアップの両立はまったく想像できていなかったといいます。そんな中、会社同期と結婚し、やがて長女を身ごもります。

「女の子だってわかったとたん急にですよ。それまで心の奥底にしまい込んでいた、自分が満たされなかった子どもの頃の想いみたいなのが怒濤のごとく押し寄せてきて『我が子が生まれたらこんな風にしてあげたい。こんなことを一緒にしたい』という気持ちが、日ごとに高まっていくのを感じました」(鷲谷さん談)

職場では「産休を終えたら戻ります」と当たり前のように言っていたのに、実際に子どもが生まれたら「違う。あの働き方では自分がやりたい子育てはできない」という気持ちが爆発し、退職して専業主婦に。けれどもその時の鷲谷さんは自分の選択に後悔はなく、再び働くことがあっても独身時代のような働き方はしないという確信がありました。そして2011年に東日本大震災が起こります。

 

起業のきっかけは2時間のボランティア活動から

 

揺れが起きたのは金曜日。鷲谷さん一家は郡山市に住んでいましたが、夫は都内にいて留守でした。一時期は夫の実家がある秋田県に避難したものの、娘の幼稚園再開と共に郡山市の自宅に戻ります。当時は原発いじめなどのニュースもあり、彼女もまた、どのように我が子を守るかで必死だったそうです。少し気持ちが落ち着いた時に「自分と同じように悩んでいるママたちはたくさんいるだろうな」と思った鷲谷さんは、母親として社会とつながって貢献できることはないかとボランティア活動をはじめます。義援金を届ける活動に始まり、海外からの留学生を案内する通訳をしたり、郡山市のまちづくり活動に関わったりと、一度家を出たら、そこからいろいろなことがつながりはじめました。「2hours」と名付けた事業は、ボランティア活動のために使った、最初の時間が2時間だったことから生まれました。「はじめの一歩を2時間からの働き方で」というコンセプトです。

 

あらゆる経験がつまってできた会社のカタチ

 

チアリーディングで経験したチームワークの力、総合職として働いた経験、まちづくり活動の中で出会った経営者の考え方、専業主婦時代に経験した「再び働く」ことへの思いや時間的制約。鷲谷さんが経営するケイリーパートナーズという会社には、今までの鷲谷さんの人生すべてがつまっています。

そこで最も大切にしているのが「調和」です。つまり女性の出産、子育てというライフステージの変化に併せて家族とも向き合い、仕事も充実させるという「調和がとれた働き方」が可能な会社。彼女が今、チャレンジしていることは、みんなが社会から必要とされて、幸せに働ける仕組み作りです。この取り組みが事業として持続可能になれば、ママたちだけでなく、誰もが笑顔で働くことができる社会が生まれることでしょう。

 

「健やかで元気いっぱいで、しっかり仕事もして、家族とも向き合って。自分でしっかりと充実させている母親の背中は、子どもたちにとっても希望だと思う。だからそういう働き方を増やしていきたい」と鷲谷さん。この言葉にオンライン参加者からも大きな同意の声がもれました。

 

イベントの後半は小グループに分かれ、鷲谷さんを囲みながら参加者それぞれの仕事観について語り合いました。短い時間ではありましたが、お互いに刺激し合う会話も飛び交う中「やはりリアルで鷲谷さんにお逢いしたい!一緒にお酒を飲みたい!」という意見も飛び出すほど。鷲谷さん、よい時間をいただき、本当にありがとうございました。ご参加いただいたみなさま、ありがとうございました!

 

聞き手:武田悦江

文責 :武田悦江