2022.1.25オンライン開催!【女性限定】 “農家のお嫁さん” が起業?!自らの畑を持つことを決意した理由とは? 景井愛実さん

 

2022年最初のゲストは福島市在住の景井愛実さんです。たまたま果樹農家に嫁ぎ、慣れないことばかりの環境でしたが、気がつけば農業の魅力に惹かれ、やがて起業を決意することに…。 嫁ぎ先の果樹農園がありながら、景井さんはなぜご自身の畑を持ちたいと思ったのか?昨年初収穫を迎えた農園で、どんなことをやりたいのか?など、景井さんご自身の人生とそのターニングポイントを伺いながら語っていただきました。

 

独身時代は美容やアパレル業界で働いていた景井さんは結婚と同時に仕事を辞め、専業主婦になります。なにも知らずに農家に嫁いだ景井さんにとって、お嫁さんとして家事をし、育児の合間に義父母の農業を手伝う日々は、今までご自身が育った環境とは違う世界でした。結婚後まもなく出産したこともあり、社会との接点がいったん切れたように思えて孤独だったと振り返ります。

 

そんな中、嫁いで4年目の2011年3月に東日本大震災が起きました。原発事故による放射性物質の拡散により福島県産の農作物は出荷停止に。当時3歳と1歳の子どもを抱えていた景井さんにとって、自宅の畑からとれた野菜を子どもたちに食べさせることも不安だったそうです。週末は子どもを連れて県外に行ったり、隣県に避難したりと自分たちの生活を守ることで頭がいっぱいでした。やがて関係者の懸命な研究と農業関係者の努力の結果、福島県産の農作物の安全性が確認され、農作物の出荷は再開しましたが、農家さんたちは風評被害に苦しみます。 

 

収穫のためには年間を通して樹木の手入れが必要な果実農家は、すぐに手入れをやめるわけにはいきません。風評により出荷状況が思わしくなくても果実農家さんたちは黙々と果実の手入れをしていました。嫁ぎ先の景井農園は全国にお客さまがいて、義父母と同世代のお客さまからの注文は主に電話や手紙、FAX。子どもが小さかった当時、注文の受付や発送の伝票書きは景井さんが手伝っていました。義父母の営む農園の手伝いをしながら気づいたことがあります。「しっかりと検査をして出荷までしている福島県。私たちも美味しいものを食べたいから」と言って注文してくれるお客さまたち。景井さんの気持ちに少しずつ変化が訪れます。農業に目を向けるようになったのです。となるとその中で気になったのは畑に破棄される果物たちのこと。廃棄される果物は目の前の畑だけではなく、他の畑でも見られる光景でした。「(廃棄される果物が」もったいない」という気持ちが自然にわき上がってきたそうです。

 

「もったいない」という気持ちが膨らんだ景井さんがまず手がけたのは、市場に出回らない果物をスムージーに加工すること。スムージーを利用したワークショップを開いたり、イベントやマルシェなどに出展したりしました。フードロスを抑えるために飲食店やレストランに果物の加工レシピ提案をすることにもチャレンジしました。「賞味期限が長いものを提供したい」という思いからドライフルーツの加工品のブランドをつくりました。

 

フードロスに着目した商品開発に取り組む一方で、景井さんは震災後に立ち上がった福島県内の若手農家さんたちの活動に加わったり、農林水産省が主催する農業女子プロジェクトに参加したりしながら農業に対する知識を深めていきます。出会ったご縁を大切にしながら常に全力投球してきた結果、次のステップに進むために2017年に起業。いち農家としてだけではなく、果物を通して生産者と消費者を結びつける役割をも担っていきたいと思うようになったからだそうです。

 

福島県産の果実を使ったアイデアを考えたり、チャレンジを重ねたりする度に常に畑に立ち戻ってきた景井さん。やがて桃畑の魅力にとりつかれます。美味しい桃を育てるために必要な冬の剪定。真っ白な雪景色の中に立つ桃の木たちのりりしい姿。桃の花が咲き誇る春。桃の収穫を迎えた畑の中でかぐ一瞬の風や空気。景井さんが感じる桃畑の心地よさを多くの人に体験してもらいたい!と思った彼女が次に起こした行動は、自分自身の畑を持つことでした。自らの畑を実験台として思い描いた世界観を試したかったからだと景井さんは語ります。

 

果樹農家の高齢化が進んでいるとはいえ、生産者にとって畑は我が子のようなもの。借りる畑探しには苦労しましたが、都内から県北地方に移住し就農した方の紹介により伊達市に近い場所に畑を確保。桃の剪定について一から勉強し、昨年夏に初収穫を迎えました。約30アールという規模は専業果実農家さんからみたらごくわずかですが、大切なホームグラウンド。景井さんが感じる畑の世界観を多くの人に体験していただく機会を増やすため、クラウドファンディングにも挑戦。見事目標金額を達成し、支援してくださった方を迎える準備に大忙しの毎日です。自ら2022年は「愛実元年」と名付け、目標に向かってさらに進むつもりだと目を輝かせながら語る景井さん。これからのご活動の広がりにますます目が離せません。

 

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聞き手:武田悦江

文責 :武田悦江