2021.6.8 オンライン開催! ITベンチャーCTOが地方移住で見つけた新たなビジョンとは?!  片岡悠人さん

 

 今回のゲストは、2年前に東京から福島県郡山市に移住したITベンチャー企業のエンジニア片岡悠人さん。Web問診システムなどの医療系アプリ開発に取り組む株式会社フリクシーのCTO(最高技術責任者)です。「学生ベンチャーの立ちあげ」「大手企業への就職と週末副業」「リモートワークによる地方移住」などを人生のターニングポイントにあげる片岡さん。やりたいことを追い求めてきた片岡さんの原動力とはなにか?に迫りました。

東京生まれの片岡さんは3歳年下の弟と2人兄弟。父親の仕事の都合により岡山県で育ちます。子ども時代はマンガが好きなマイペースでおっとりしたインドア派。雨の日は自分たちが作ったカードゲームを持ち寄って友だちと遊ぶのが好きでした。スーパーファミコン全盛時代の当時、ゲームにも熱中したそうです。一方で教育熱心な父親から奨められて小学校3年の頃から塾に通い始めます。成績がよいとシールをもらえるのがうれしくて、だんだん上のクラスに進み、がんばって勉強する友だちの影響を受けて成績が伸び、中学受験をして、鹿児島県にある中高一貫校に進み寮生活を始めました。点呼があり、自習時間も厳しく決められていたという寮生活では、勉強する振りをして将棋をやったり、つかの間の自由時間を楽しんだりしていました。親から距離的に離れて暮らす開放感からだったといいます。学校は進学校だったため東京大学か医学部に進学する人がほとんどの中、医者になる選択は自分にはないと考え、一浪して東京大学に入学し、上京。ここでも他大学の学生が集まる、家族のような寮生活を楽しみます。

研究者になりたいと思い東京大学に入った片岡さんは人工知能に興味を抱き、DNA情報の解析をしたくて大学院に進みます。ところが実際取り組み始めると何かが違いました。憧れの研究者の道でしたが、実際に進めてみるとその道は想像以上に険しく、難しい課題のなか、モチベーションコントロールもままならず、思うように自分の研究を構築できないジレンマを感じていました。そんなときに医療系の学生とプログラミング系の学生が集まって一つのアプリを作って発表するという学生ビジネスコンテストに参加し優勝します。そのときのチームメンバーが中心になり、フリクシーとして起業することになりました。

26歳で大学院を卒業後、就職と同時に結婚したことは、片岡さんの人生において特徴的なできごとでした。就職先のリクルートでは新規事業に関わりつつ、仲間と一緒に立ちあげたフリクシーの業務も続けることが可能な恵まれた環境にいたのにも関わらず、新規事業もフリクシーの事業も思うような結果を出すことができません。悩んだ末にリクルートを退職。「1度しかない人生なのだからやってみたら」という妻の後押しもあり、フリクシーの事業1本に専念するという決断をくだします。立ちあげ時期は製品を開発しても思うように売れなかったものの、自分たちで好きなようにできるのが楽しく、仕事に没頭する日々が続きました。やがてWEB問診を使いたいというニーズに応えた製品が売れるようになり、ますます仕事が面白くなります。プライベートでは子どもが生まれ、公私ともに順調な日々が続くと思われましたが…。

ある出来事をきっかけに、片岡さんは妻の故郷である福島県への移住を考えるようになります。オフィスに出勤せずに、リモートで仕事をする選択…。コロナ禍を経験した今だからこそ、私たちに抵抗感はなくなっていますが、それよりも前の出来事でした。何度か夫婦で話し合った結果、フリクシーの代表に相談すると意外にも「いいよ」という返事が…。リモートワークを基本とし、必要な場合は都内に出向くという働き方にチェンジしました。現在は郡山市にあるシェアオフィスを利用する傍ら、地域ビジネス交流会に参加して優勝したり、都内で開催される移住促進のセミナーに経験者として登壇したりと、移住体験者ならではの活動に加わりながら職・住接近した暮らしを充実させています。

 

そんな片岡さんのこれからの夢とは…?

 

起業家としては会社の事業を軌道にのせていきたいこと。プライベートでは、意外にも研究者としての未来も考えているとか。もちろん漠然としたものであり、具体的な想定はありません。ただ「人工生命」という分野には、今も心がときめくといいます。

 

「自らの人生を語る」という経験は、片岡さんご自身にとっても初めてであり、緊張された面持ちながらもゲストとして語ることで「自分の新しい一面を知ることができたら」という期待感で臨んだとか。参加者からは、見知らぬ土地に来ても周りとなじみやすかったのは片岡さんの人懐こさゆえんではないかとか、自らの仕事を学問的に研究するために、現在大学院に通う参加者からは仕事そのものが研究につながる可能性もあるのではないかなど、様々な感想や提案が飛び出しました。語り場へのご登壇が、これからの仕事に、またプライベートに役立つ一助となれたら幸いです。片岡さん、ありがとうございました。

 

聞き手:三部香奈

文責武田悦江